離れて暮らす高齢の親に「最近、体調はどう?」と聞くと、「大丈夫」「病院には行かない」と言われる。電話の声や食事の様子が気になる家族は、放っておいてよいのか迷うかもしれません。
受診を勧めても断られると、家族は不安になります。まず急な異変がないかを確認し、緊急性がない場合は、何が受診の負担になっているのかを聞いてみましょう。
この記事では、離れて暮らす家族が落ち着いて確認したいこと、親に伝えやすい声かけ、家族だけで抱えないための相談先を紹介します。
この記事は一般的な情報であり、病気の診断や治療、個別の受診判断を行うものではありません。意識がおかしい、強い息苦しさがある、ろれつが回らない、片側の手足に力が入りにくいなど、急な異変や命に関わる心配がある時は、本人を説得し続けるより119番への連絡を優先してください。
説得する前に、緊急性がないかを確認する
本人の気持ちを聞くことは大切ですが、急な異変がある時は、ゆっくり話し合う場面ではありません。電話では様子が分かりにくいため、親の返事だけでなく、話し方や受け答えが普段と違わないかも確認します。
- 呼びかけへの反応が悪い、意識がぼんやりしている
- 強い息苦しさがある
- 急な胸の痛みや、我慢できないほどの強い痛みがある
- ろれつが回らない、顔の片側がゆがむ
- 片側の手足に力が入りにくい
- 急に立てない、歩けない
- 転倒後に様子がおかしい
命に関わる心配がある時は119番へ連絡してください。救急車を呼ぶべきか迷う時は、対応地域では救急安心センター「#7119」に電話で相談できます。親が住む地域で利用できるかは、総務省消防庁の「救急安心センター事業(#7119)」で確認できます。利用時間や対象年齢も地域によって異なるため、あわせて確認してください。
いざという時に備え、相談先や連絡方法を家族で確認しておきたい時は、救急車を呼ぶか迷ったら|家族が知っておきたい119・#7119の使い方も参考にしてください。
「病院に行かない」には、本人なりの理由がある
家族から見ると必要な受診でも、親は同じように感じているとは限りません。受診をためらう背景は、人によって異なります。
- 病気が見つかることや検査が怖い
- 以前の受診でつらい経験をした
- 本人は、それほど困っていないと感じている
- 家族に迷惑や心配をかけたくない
- 通院の移動、待ち時間、費用が負担
- 聞こえにくさや説明の分かりにくさがある
- 自分の生活を家族に決められたくない
ひとつの理由だけとは限りません。病気や認知症と決めつけず、「病院の何がいちばん気になる?」「行くとしたら、何が負担になりそう?」と聞いてみましょう。
気になった様子を整理して、短く伝える
心配が強いと、つい言葉が強くなることもあります。緊急性がない場合は、その場で受診を約束させようとせず、気になった様子をメモしてみましょう。
普段と違うところをメモする
- いつから、どのような変化があるか
- 普段と比べて何が違うと感じたか
- 食事、水分、睡眠、薬、外出に変化があるか
- 家族が直接確認できたことと、推測していることを分ける
- 今すぐ対応したいことと、後日相談できることを分ける
電話の声、食事、会話などの変化を整理したい時は、高齢の親が急に元気がないとき|救急・受診の目安と家族が確認することも参考にしてください。
兄弟姉妹など複数の家族が関わる時は、全員が別々に電話して受診を迫るより、まず家族の連絡役を一人決める方法もあります。親を囲んで説得する形にならないようにしましょう。
責めずに、具体的な変化と心配を伝える
「年なんだから病院へ行って」「みんな心配している」と言われると、親は責められたり、弱い人として扱われたりしたように感じるかもしれません。
性格を評価するのではなく、家族が気づいた具体的な変化を短く伝えます。
- 「この前より電話の声が小さく感じて、少し心配になったよ」
- 「最近、食事がとれていないと言っていたのが気になっているよ」
伝えた後は、本人がどう感じているかも聞いてみましょう。
受診の負担を減らす方法を一緒に考える
移動や待ち時間、付き添いなど、何が負担かによって手伝えることも変わります。本人の希望を聞きながら、次のような方法を考えてみましょう。
- いつものかかりつけ医と、別の医療機関のどちらが話しやすいか
- 午前と午後のどちらが動きやすいか
- 一人で行くか、家族や信頼する人が付き添うか
- 家族が予約や移動だけ手伝うか
- まず薬剤師や地域の相談窓口に困りごとを相談するか
医療機関によっては、予約方法、家族の同席、電話やオンラインでの相談、訪問による診療などの対応が異なります。利用できると決めつけず、希望する方法が可能か医療機関へ確認してください。
本人がその日は断っても、緊急性がなければ「また明日話してもいい?」と会話を続ける方法があります。家族の安心のためだけに急がせるのではなく、本人が困っていることから一緒に考えましょう。
離れて暮らす家族が準備できること
遠距離では、家族がすぐに付き添えないこともあります。普段から、親と一緒に次のことを確認しておくと、体調が変わった時に相談しやすくなります。
- かかりつけ医と薬局の名前、電話番号
- お薬手帳など、受診に必要なものの保管場所
- 本人が頼りたい親族、友人、近所の人
- 受診時に家族へ連絡してよい範囲
- 急な異変があった時の連絡順
- 家族ができることと、難しいこと
本人の同意なく近所の人へ健康状態を広く伝えたり、家の中を確認したりすることは避けます。誰に、どこまで頼みたいかを、元気な時から一緒に決めておきましょう。
家族だけで難しい時は、第三者へ相談する
親子では感情的になりやすくても、普段から信頼している医師や薬剤師、地域の支援者の話なら聞きやすいことがあります。
- かかりつけ医:継続している症状や持病について相談したい時
- かかりつけ薬局・薬剤師:薬の飲み方、副作用と思われる変化、残薬が気になる時
- 地域包括支援センター:受診だけでなく、食事、買い物、見守りなど生活全体の心配が重なっている時
- 市区町村の相談窓口:地域の医療・介護・高齢者相談の窓口を知りたい時
医療機関や相談窓口へ家族だけで相談する場合、相談を受けてもらえる範囲や、本人の情報を家族へ説明できる範囲は状況によって異なります。本人の同意を得られる時は、家族も一緒に相談したいことを伝えておきましょう。
地域の相談先については、地域包括支援センターにはいつ相談する?介護保険がまだ必要かわからない家族へで詳しく紹介しています。
もの忘れや判断の変化も気になる時
受診したくないという言葉だけで、認知症と判断することはできません。一方で、同じ話が増えた、薬やお金の管理が難しくなった、約束を何度も忘れるなど、生活上の変化が重なっている時は、家族だけで抱えず相談しましょう。
認知機能の変化が心配な場合でも、家族がすぐに本人の代わりにすべてを決めるのではなく、本人が理解しやすい言葉や時間帯を選び、希望を確かめながら進めることが大切です。本人が意思を伝えやすいように、落ち着いて話せる場所や、一度に話す家族の人数にも配慮しましょう。
会話や生活の変化が気になる時は、認知症かも?と思った時に見る生活の変化|家族が気づきたいサインと相談の目安も参考にしてください。
まとめ
- 急な異変がある時は、話し合いより119番への連絡を優先する
- 親を「頑固」と決めつけず、受診したくない理由を聞く
- 家族が確認した事実と、心配からの推測を分ける
- 見えた変化を短く伝え、本人が選べる部分を残す
- 家族だけで難しい時は、かかりつけ医、薬剤師、地域包括支援センターなどへ相談する
一度の会話で決められないこともあります。緊急性がない時は、親の気持ちを聞きながら、相談しやすい小さな一歩を一緒に探していきましょう。


コメント