離れて暮らす高齢の親と久しぶりに食事をした時に、以前は食べていたお肉や漬物を残して、うどん・豆腐・煮物ばかり選んでいる。
「年齢のせいかな」と思うかもしれませんが、入れ歯が痛い、外れやすい、噛むとずれるなど、口の中の困りごとが隠れていることがあります。
入れ歯が合わないままでは、食事がつらくなり、食べる量や選ぶ食材が少しずつ変わることがあります。柔らかい物を選ぶこと自体が悪いわけではありません。ただ、好きな物を我慢していたり、食事量が減っていたりする時は、早めに理由を確認することが大切です。
この記事では、家族が食事の場面で気づきたい変化と、歯科へ相談したい目安を、看護師の視点でまとめます。
※この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療を目的とするものではありません。食事がとれない、急にむせが増えた、ぐったりしているなど、いつもと明らかに違う時は早めに医療機関へ相談してください。
「柔らかい物ばかり」が気になる時
離れて暮らしていると、毎日の食事の様子までは分かりにくいものです。だからこそ、帰省や外食などで一緒に食べる時間は、さりげなく変化に気づく機会になります。
たとえば、次のような様子が続いていないか見てみましょう。
- 以前は好んで食べていた肉、魚、野菜を残す
- うどん、豆腐、煮物、パンなど柔らかい物に偏っている
- 硬い物や繊維の多い物を「噛めない」「食べにくい」と言う
- 食事に時間がかかるようになった
- 食べる時に口元を手で隠す
- 入れ歯を外して食べている、または入れ歯を使わなくなった
このような変化があっても、すぐに「入れ歯が原因」と決めつける必要はありません。歯の痛み、口内炎、飲み込みにくさ、食欲の低下、体調の変化など、理由はいくつか考えられます。
大切なのは、「柔らかい物を選ぶようになった」という小さな変化を、親の食べにくさに気づくきっかけにすることです。
入れ歯が合わないと、食事がつらくなることがある
入れ歯は、長く使ううちに口の中やあごの形の変化によって合いにくくなることがあります。痛みが出る、ずれる、外れやすいといった不具合があると、しっかり噛むことが負担になり、食事そのものが苦痛になることもあります。
入れ歯が合わない時には、次のような困りごとが見られることがあります。
- 噛むと痛い、歯ぐきが傷つく
- 話す時や食べる時に入れ歯がずれる・外れる
- 入れ歯を入れると吐き気がする、違和感が強い
- 食べ物が入れ歯の下に入り込んで痛い
- 入れ歯を外したまま食べることが増えた
入れ歯が合わない、歯がぐらつく、歯の本数が減るなどの状態では、柔らかい物を選びやすくなり、お口の機能がさらに低下することがあります。
「入れ歯を入れれば食べられるはず」とは限りません。入れても外れてしまう、痛くて噛めないという時は、我慢して使い続けるより、歯科で状態を見てもらうことが必要です。
飲み込みの問題と、口の中の問題を分けて考える
食べにくそうな様子があると、「飲み込む力が落ちたのかな」と心配になるかもしれません。
実際に、歯や入れ歯の問題でうまく噛めないと、十分に噛まないまま飲み込むように食べてしまうことがあります。一方で、むせる、食べた後に声がかすれる、のどに残る感じがするなど、飲み込みの問題が関わることもあります。
どちらか一つと決めつけず、まずは「入れ歯は痛くないか」「噛めているか」「むせていないか」を一緒に確認しましょう。
食事中や食後のむせ、飲み込みにくさが気になる時は、「一人暮らしの高齢の親の飲み込みが心配なとき」の記事もあわせて参考にしてください。
歯科に相談したいサイン
次のような時は、かかりつけの歯科医院へ相談しましょう。
- 入れ歯を入れると痛い、外れる、ずれる
- 歯ぐきが赤い、腫れている、傷や口内炎がある
- 入れ歯を使わなくなった
- 硬い物や好きだった物を食べなくなった
- 食べる量が減った、体重が減ってきた
- 口のにおい、口の乾き、話しにくさが気になる
歯科では、入れ歯の調整だけでなく、残っている歯や歯ぐき、口の粘膜の状態も確認してもらえます。自己判断で入れ歯を削ったり、市販の接着剤だけで済ませたりせず、まずは相談してみましょう。
食事や水分がほとんどとれない、強い痛みがある、ぐったりしている、息苦しそうなどの急な変化がある場合は、歯科の予約を待たず、かかりつけ医や医療機関へ相談してください。緊急性が高い時は119番です。
家族ができるのは、困りごとを一緒に確かめること
心配だからといって、「ちゃんと入れ歯を入れて」「もっと食べて」と言われると、親は責められたように感じることがあります。
一緒に食事をする時は、普段の会話の中で、こんなふうに聞いてみるのがおすすめです。
- 「最近、食べにくい物はない?」
- 「入れ歯、痛いところはない?」
- 「このおかず、噛みにくくない?」
- 「今度、歯医者さんで一度見てもらおうか」
目指したいのは、家族だけで食事を大きく変えることではありません。本人が何に困っているのかを一緒に確認し、必要に応じて歯科医師や歯科衛生士、かかりつけ医などへつなぐことです。
看護師あややからのひとこと
入院中の患者さんでも、入れ歯が合わず、入れても外れてしまう方がいます。
そうなると、柔らかい物しか食べられなくなり、食事の量だけでなく、食べる楽しみまで減ってしまうことがあります。
「柔らかい物を選ぶようになった」という変化は、ただの好みの変化ではなく、口の中の困りごとのサインかもしれません。気になった時は、無理に食べさせようとせず、親と一緒に確認してみてください。
まとめ
柔らかい物ばかり食べるようになった時は、入れ歯や歯ぐき、口の中に困りごとがないかを、親と一緒に確かめてみましょう。
- 以前より柔らかい物に偏っていないか
- 入れ歯が痛い、外れる、ずれることはないか
- 食べる量や好きな食べ物が変わっていないか
- むせや飲み込みにくさがないか
小さな変化に早めに気づくことが、親がこれからも安心して食べることにつながります。


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