「最近、お風呂に入っていないみたい」
離れて暮らしていると、そんな変化を知ったときに、どう声をかけたらいいのか迷いますよね。
「ちゃんと入らなきゃ」と言う前に、少しだけ聞いてみませんか。
疲れる、着替えが大変、浴槽をまたぐのが怖い、上がったあとが寒い。
「入りたくない」と感じる理由は、一つとは限りません。
この記事では、電話で聞けること、会ったときに一緒に見たいこと、相談したほうがいい目安を、看護師の目線からお伝えします。
「入らない」の裏に、負担が隠れていることも
入浴には、服を脱ぐ、浴室まで歩く、体や髪を洗う、浴槽をまたぐ、体を拭いて着替えるなど、いくつもの動作があります。
以前は何気なくできていたことでも、痛みや疲れ、ふらつきがあると、一つひとつの動作が負担になることがあります。
ほかにも、
- 浴槽をまたぐのが怖い
- 脱衣所や浴室が寒い
- 一人で入るのが不安
- 入ったあとに疲れる
- 着替えるのが面倒に感じる
といった理由が隠れていることもあります。
「お風呂が嫌いになった」と決めつけず、どの場面がつらいのかな?と考えてみるところからで大丈夫です。
看護師として病院で働いていると、
「今日はお風呂はいいよ」
「疲れるから入りたくない」
と話していた方が、入ったあとには、
「さっぱりした」
「気持ちよかった」
と笑顔になる場面によく出会います。
そんな姿を見ると、入浴そのものが嫌というより、入るまでの負担が大きかったのかもしれないなと感じます。
電話では「どこが大変?」と聞いてみる
「ちゃんとお風呂入ってる?」
と確かめるよりも、普段の会話の中で、答えやすいことを一つ聞いてみてください。
- 「お風呂に入ると疲れる?」
- 「着替え、大変じゃない?」
- 「浴槽をまたぐの怖くない?」
- 「お風呂や脱衣所、寒くない?」
- 「一人で入るの、心配じゃない?」
全部を一度に聞かなくても大丈夫です。
本人が答えたくなさそうなら、問い詰める必要もありません。
いつ頃から入る回数が減ったのか、どんなことを負担に感じているのか。
分かったことだけでも覚えておくと、あとで相談するときに役立ちます。
会ったときは、本人と一緒に浴室を見てみる
会いに行ったときは、
「お風呂で使いにくいところ、ある?」
と聞いてみるのもいいですね。
本人がよければ、
- 脱衣所や浴室が寒すぎないか
- 床が滑りやすくないか
- 浴槽が高く、またぎにくくないか
- 手すりにつかまれる場所があるか
- お風呂用のイスが安定しているか
- タオルや着替えを取りやすい場所に置けるか
こんなところを一緒に見てみると、困っていることが分かるかもしれません。
家族だけで細かくチェックしたり、その場で無理に入ってもらったりしなくても大丈夫です。
ふらつきや転倒が心配なら、まずはどうしたら安全に入れるかを一緒に考えてみてくださいね。
入浴中の事故を防ぐためには、脱衣所や浴室を暖めておくことや、熱すぎるお湯・長湯を避けることも大切です。
「寒いから入りたくない」も、ちゃんとした理由です
「お風呂から上がったあと寒いから嫌」
病院でも、こう話す方は少なくありません。
脱衣所や浴室が冷えていると、
「服を脱ぐのがつらい」
「上がったあとが寒い」
と感じやすくなります。
そんなときは、
- 入る前に脱衣所を暖めておく
- タオルや着替えを先に準備しておく
- お風呂から上がったらすぐ着られるようにしておく
といった工夫で、負担が少し減ることもあります。
「お風呂が嫌い」ではなく、寒いのが嫌だったということもあるんですね。
体調が悪い日は、入浴より体調を優先して
疲れが強い日や体調がすぐれない日に、無理に湯船へ入る必要はありません。
そんな日は、
- 顔や手を洗う
- 体を拭く
- 下着や服を着替える
- 足だけ洗う
など、その日にできそうな方法を一緒に考えてみるのもいいですね。
「今日は全部やらなくてもいいよ」
と言われるだけで、気持ちが楽になることもあります。
大切なのは、毎回しっかりお風呂に入ることだけが正解ではないということです。
「前は入っていたのに、急に入らなくなった」ときは少し注意して
以前は普通に入っていたのに、最近になって急に入らなくなった。
そんなときは、
「年齢のせいかな」
「面倒になったのかな」
だけで済ませず、ほかの変化も一緒に見てみてください。
たとえば、
- 食欲が落ちてきた
- 体重が減ってきた
- 歩くのが遅くなった
- ふらつきが増えた
- 息切れするようになった
- 膝や腰の痛みが強くなった
- 着替えをしなくなった
- 外に出ることが減った
- 会話や行動が以前と変わってきた
こうした変化も一緒に見られるなら、入浴だけの問題ではないこともあります。
「お風呂に入らない」ことだけを見るのではなく、暮らし全体で何か変わっていないかな?
と見てみることが大切です。
分かったことは、相談するときの手がかりになります
電話や訪問で分かった、
「どこが大変なのか」
「いつ頃から入る回数が減ったのか」
といったことは、相談するときの大切な手がかりになります。
痛み、息切れ、強い疲れ、ふらつき、気分の落ち込みなどが続いているなら、かかりつけ医へ相談してみてください。
お薬が関係していそうなら、薬剤師に聞いてみる方法もあります。
「一人で入るのが難しくなってきた」
「家族だけではどうしたらいいか分からない」
そんなときは、地域包括支援センターに相談するのもひとつです。
使えるサービスや、安全に暮らすための方法を一緒に考えてもらえることがあります。
家族だけで無理に介助を引き受けなくても大丈夫です。
急な体調変化があるときは、「お風呂の問題」として様子を見ないで
もちろん、「お風呂に入らない」ということだけで救急車を呼ぶ必要はありません。
ただし、
- 急に意識がはっきりしなくなった
- 強い胸の痛みがある
- 急に息苦しくなった
といった急な体調変化がある場合は、入浴の問題として様子を見ず、119番へ連絡してください。
大切なのは、いつもの様子と急に違うところがないかを見ることです。
まとめ
「最近、お風呂に入っていないみたい」
そんな話を聞くと、離れて暮らしている家族は心配になりますよね。
でも、
「ちゃんと入って」
と伝える前に、
「どこが大変?」
と聞いてみませんか。
そこには、
- 疲れる
- 痛い
- 寒い
- 転ぶのが怖い
- 着替えるのが大変
- 一人で入るのが不安
そんな理由が隠れているかもしれません。
次の電話では、まず一つ聞くだけでも十分です。
そして、困りごとが続いているときは、家族だけで抱え込まず、本人と一緒に相談先を考えてみてくださいね。
「お風呂に入れたか」だけではなく、気持ちよく、安全に過ごせているか。
そんな視点で見ていけるといいですね。
この記事は、日々の様子を見るときの参考としてまとめたものです。体調の変化や入浴の安全に不安があるときは、医療機関や地域の相談窓口に相談してください。
参考:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」、厚生労働省「地域包括ケアシステム」、総務省消防庁「救急車利用マニュアル」


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