離れて暮らす親から「最近、食事が進まない」と聞くと、家族は心配になるかもしれません。久しぶりに一緒に食事をした時、なかなか箸を持たず、途中で手が止まることに気づくこともあります。
離れていると、毎日の食事の様子まではわかりません。まずは、電話や次に訪ねた時にわかることから見ていきましょう。
普段の会話では、食事について困っていることがないかを聞いてみます。訪ねた時には、無理のない範囲で一緒に食事をしてみましょう。この記事では、電話で聞けること、訪ねた時に見たいこと、医療や介護へ相談する目安を紹介します。
食べない理由は、食欲だけとは限らない
食事量が少ないと、「食欲が落ちたのかな」と思うかもしれません。ただ、食べる量だけでは理由はわかりません。
箸を持ちにくい、硬い物を噛みにくい、途中で疲れるなど、食欲とは別の理由も考えられます。また、食卓が暗い、料理が一度にたくさん並んでいるなど、食事の環境が影響していることもあります。
次のような様子がないか、見てみましょう。
- 食卓についても、料理に手を伸ばさない
- 食べ始めるが、途中で箸が止まる
- 硬い物だけを残す
- 声をかけたり食器を近くに置いたりすると、また食べ始める
好きな物にも手をつけず、食事量の少ない日が続いている時は、高齢の親の食欲が落ちたとき|まず見たいことと受診の目安に詳しくまとめています。
電話では、急な体調不良がないかを先に聞く
「食べられない」と聞いた時は、食事の工夫より先に、急な体調不良がないかを聞きます。
- 呼びかけても反応がない、会話が成り立たない
- 急に息苦しそうにしている
- 急にろれつが回らなくなった
- 「片方の手足に力が入らない」と話す
- 食べ物をのどに詰まらせ、呼吸ができない
このような時は、次に会う時まで待ちません。本人が自分で電話できるなら、すぐに119番へ連絡するよう伝えます。
本人が自分で連絡できず、家族も離れた場所にいる場合は、住んでいる地域を管轄する消防指令センターへ連絡します。消防指令センターは、119番通報を受ける窓口です。連絡先や対応は地域によって異なるため、本人の住所と、その地域を管轄する消防本部の連絡先を控えておくと安心です。
「#7119」は、救急車を呼ぶか迷った時に相談できる窓口です。利用できる地域や時間帯は、地域によって異なります。詳しくは、高齢の親が急に元気がないときと救急車を呼ぶか迷ったときの考え方にまとめています。
電話では、普段の会話の中で聞いてみる
急な体調不良がなければ、食事の話を少しずつ聞いてみます。一度にいくつも聞かず、普段の会話の中で一つか二つ尋ねるくらいで十分です。
最近、食べにくい物はある?
好きな物は食べられてる?
食べている途中で疲れることはない?
むせること、増えてない?
「ちゃんと食べている?」と量だけを聞くよりも、食べにくい物や困っていることを聞く方が、本人も答えやすくなります。
「買い物や料理が大変」と話す時は、買い物や調理の負担をどう減らせるか、一緒に考えます。一人暮らしの高齢の親が食事を作らなくなったときに、食事を用意する負担と支え方をまとめています。
食事を用意する負担を減らすために宅配食を考える場合は、高齢の親に宅配食を選ぶときのポイントで、受け取りや温め、費用を確かめる順番を紹介しています。
訪ねた時は、一緒に食事をしてみる
訪ねる機会があれば、一緒に食事をしてみましょう。冷蔵庫の中や食べ残しを見たい時も、先に本人へ声をかけます。
一緒に食卓を囲むと、電話ではわからなかった様子が見えることがあります。
- 食卓についても、なかなか箸を持たない
- 箸やスプーンを持ちにくそうにしている
- 食べ始めても、途中で手が止まる
- 姿勢が傾く、疲れた表情になる
- 硬い物や大きな物だけを残す
- 食事中にむせる、咳が出る
- 食後に声がかすれる、痰がからんだような声になる
硬い物だけを残す時は、歯や入れ歯が合っていないこともあります。高齢の親が入れ歯で食べにくそうなときに、歯や入れ歯のどこを見ればよいかをまとめています。
食事中に何度もむせる時は、いったん食事を休みます。食後に声がかすれる、痰がからんだような声になるといった変化が続く時は、高齢の親がむせる・飲み込みにくそうなときも参考に、医療機関へ相談しましょう。
訪ねた時に、本人と一緒に試せること
食事中に手が止まる時は、どうしたいかを聞きながら、次のことを一つずつ試してみましょう。
- テレビを消し、周りの音を減らす
- 食卓を明るくする
- 椅子に深く座り、足が床や足台につくようにする
- 箸やスプーンを取りやすい場所に置く
- 使い慣れた食器を使う
- 料理が多い時は、希望を聞いて一品ずつ並べる
今は食べたくない?
食べにくい物はある?
お味噌汁はどう?
少し休む?
声をかける時は、短く、一つずつ伝えます。箸を持ちやすい向きに置く、料理のふただけ開けるなど、「手伝おうか」と聞き、望んだところだけ手を貸します。
少し手を貸せば食べられる時は、あとは自分で食べてもらいます。嫌がる時は無理に続けず、「どうしたい?」と聞いてみましょう。
刻み食やとろみを家族だけで始めない
むせたり食べにくそうにしたりすると、食べ物を細かく刻んだり、とろみをつけたりする方法を思い浮かべるかもしれません。
しかし、食べやすい形は、噛む力や飲み込む力によって人それぞれです。細かくすれば誰にでも安全とは限りません。とろみの濃さも、飲み込む状態に合わせて専門職に相談しながら決めます。
刻み食やとろみを始める前に、かかりつけ医や歯科医師へ相談しましょう。必要に応じて、言語聴覚士や管理栄養士などにつないでもらえます。
相談するまでは、むせた食べ物や飲み物を無理に勧めません。本人のペースで食べてもらいます。
毎日の食事が心配な時は、本人と一緒に相談先を決める
離れて暮らしていると、毎日の食事の様子をすべて知るのは難しいものです。電話の回数を急に増やしたり、食事中の動画を毎日求めたりすると、本人の負担になることもあります。
食べる量が少ない日が続いたり、むせや体重の減少が気になったりする時は、普段から関わりのある人や地域の相談先に話してみます。
- かかりつけ医や歯科医師
- 担当のケアマネジャー
- 訪問看護師やホームヘルパー
- 利用しているデイサービスの職員
- 地域包括支援センター
緊急時を除き、誰に相談するかは一緒に決めます。
介護サービスを利用していない場合は、地域包括支援センターへ相談するタイミングに、相談できる内容や連絡する目安をまとめています。
受診や介護相談で伝えること
受診や介護相談の時は、「食事が進みません」だけでなく、電話で聞いたことや、訪ねた時に見た様子を伝えます。
- いつ頃から気になり始めたか
- 最初から手をつけないのか、途中で止まるのか
- 好きな物なら食べられるか
- 硬い物だけを残していないか
- むせや咳があるか
- 声かけや食器の位置で、食べ方が変わったか
- 食事にかかる時間とおおよその量
- 体重も減っているか
電話で食事について話した日や、一緒に食べた時の様子を、一言か二言残しておくと受診時に役立ちます。
食事中の様子を撮った動画を受診時に見せたい場合も、先に撮ってよいか聞きます。嫌がる時や許可が得られない時は撮影せず、短いメモで伝えます。
食事量が減り、体重も落ちてきた時は、高齢の親が痩せてきたとき|体重の記録と受診の目安も参考になります。
歩く速さや外出の回数なども変わってきた時は、高齢の親が少しずつ弱ってきたとき|フレイルのサインと相談先で、暮らし全体の様子を見てみましょう。
まとめ|電話で聞き、訪ねた時に一緒に見る
離れて暮らしていると、食事の様子が気になることもあります。ただ、食事が進まない理由は食欲だけとは限りません。
まずは普段の電話で、食べにくい物はないか、途中で疲れたりむせたりしていないかを聞いてみます。訪ねた時は、一緒に食事をしながら、どこで手が止まるのかを見てみましょう。
家族だけで抱えず、誰に相談するかを一緒に決めましょう。かかりつけ医や地域の支援者も力になってくれます。
ここで紹介した様子だけで、食べられない原因を決めることはできません。急な体調不良がある時は、症状に応じて119番や救急相談窓口へ連絡します。食事量の少ない日が続く時は、次に会う日まで待たず、かかりつけ医へ相談しましょう。


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